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自己破産における同時廃止

  • 文責:弁護士 上田佳孝
  • 最終更新日:2023年1月19日

1 同時廃止とは

自己破産には、「同時廃止」と「管財事件」という大きく2つの分類があります。

同時廃止は財産がないこと、債務が増えてきた経緯に大きな問題がないことが証明できた場合に認められる自己破産のことです。

破産法216条1項には、次のように定められています。

「裁判所は、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは、破産手続開始の決定と同時に、破産手続廃止の決定をしなければならない。」

破産財団とは、自己破産する方の財産で、債務の弁済として、債権者の皆さんに分けるべき財産ということです。

破産手続の費用とは、管財事件になったときの予納金(裁判所に納める費用)のことで、裁判所ごとに金額は異なります。

参考リンク:裁判所・自己破産の申立てを考えている方へ

破産手続開始の決定と同時に、廃止の決定をするということで、同時廃止と呼んでいます。

2 同時廃止のメリット

自己破産のうち、同時廃止と管財事件では、同時廃止になる方が依頼者にとっては圧倒的にメリットが大きいです。

同時廃止になるメリットは、大きく分けると3つあります。

⑴ 1つ目は、費用が安くて済むことです。

同時廃止も管財事件も、予納金(裁判所に納める費用)が必要です。

一般的に、同時廃止で裁判所に納めるお金は、官報に掲載する費用と郵便代等で1万5000円程度です。

これに対して、管財事件は、管財人という第三者的な立場の弁護士を裁判所が選び、財産が本当に残っていないかや債務が増えた経緯を調査して、本当に債務の支払義務をなくしてよいかどうか意見を述べる手続です。

管財事件の予納金は、主に管財人の報酬に当たり、裁判所ごとに異なりますが、最低で20万円と定めているところが多いようです。

これに官報に掲載する費用として、1万5000円程度が加わりますので、22万円程度になる裁判所が多いです。

事案が複雑であれば、40万円を超える金額になることもあります。

このように、裁判所に納める費用は、同時廃止になることで、管財事件になる場合より、少なくとも20万円程度安くなります

⑵ 2つ目のメリットは、裁判所等に行く必要がないか、行くことがあっても、少ない回数で済むことです。

管財事件になれば、管財人が選ばれます。

管財人は、ご自身が依頼される弁護士とは、必ず別の弁護士になります。

管財事件になれば、少なくとも1回、管財人の法律事務所に面談に行く必要があります。

実際は、1ヶ月に1回程度、管財人の事務所に面談に行かなければならないことが多く、3回以上面談に行かれる方も珍しくありません。

これに対し、同時廃止の場合は、管財人が選ばれませんので、管財人に面談に行く必要もありません。

同時廃止の場合に裁判所に行く必要があるかは、裁判所ごとに異なります。

問題が少ないケースでは、1回も行かなくてよいという運用の裁判所もあります。

少なくとも1回は裁判所に行かなければならないという運用の裁判所もあります。

それでも、基本的には1回で済みますし、他の自己破産する方と一緒に集団で、裁判官の話を聞くという形の裁判所も多いので、個別具体的な込み入った質問は受けにくい傾向にあります。

これに対し、管財事件の場合は、必ず1回は裁判所に行かなければなりません

同時廃止が集団でやるケースも多いのに対して、管財事件では債権者集会として個別に行われますので、込み入った質問をされることもありますし、債権者が出席するケースもあります。

管財事件の場合は、管財人の調査が終わるまで裁判所に行く回数も増え、3、4回行かなければならない方も珍しくありません。

⑶ 3つ目は、期間が短くて済むことです。

同時廃止の場合は、裁判所で破産手続が始まってから、3~4カ月程度で債務の支払義務がなくなる免責決定が出るのが通常です。

これに対して、管財事件の場合は、財産が多少なりともある方であれば、管財人がそれを売ってお金にかえて債権者に分配するなどしなければなりません。

裁判所で破産手続が始まってから、最短では3ヶ月程度ですが、1年程度かかることも多くあります。

このように、自己破産するときに同時廃止で終わることには、大きなメリットがあり、誰もが管財事件になるよりは同時廃止で終わることを希望します。

3 同時廃止で終わらない理由

では、同時廃止で終わらせるためには、どうすればよいのでしょうか。

それは、同時廃止にならない場合がどういう場合か分析するところから始まります。

同時廃止にならない場合は、大きく分けると2つあります。

一つは、⑴財産が多少なりとも残っているか、債権者に分けるべき財産がある可能性を否定できないという、財産状況にまつわるケースです。

二つ目は、⑵債務が増えてきた経緯に問題があるケースです。

⑴ 財産状況にまつわるケースをもう少し分類すると、以下の3つがあります。

  • ①実際に財産が残っている。
  • ②使い道が分からないお金があり、財産が使われずに残っている疑いがある。
  • ③不適切なお金の使い道があり、相手方から取り返してくる等で債権者に分ける財産ができる可能性がある。

①は、どの程度の価値がある財産があれば同時廃止にならないかは、財産の種類(預金、保険、車、株式など)や裁判所ごとに異なりますが、20万円が一つの目安になっています。

②は、借入金自体や、過去にまとまったお金が入ったにもかかわらず、その使い道について合理的な説明や証拠が出せないでいる場合をさします。

たとえば、1年前に退職金が500万円入ったにもかかわらず、自己破産するときには残っていなかったとすると、1ヶ月あたり40万円以上のお金を使っていたことになりますから、生活費というだけでは使い道の説明がつかないことになるのが通常です。

③は、自己破産では、一部の債権者だけ返済することを禁じていますので、そのような返済があれば、返済を受けた債権者から返済を受けた金額を取り返すことで、他の債権者にも平等に分けることができるというのです。

たとえば、消費者金融や銀行から500万円の借入があり、父親に50万円の借入がある方が、他の債権者に返さなくなったのに父親にだけ50万円返済した場合は、父親から50万円を取り返すことで、他の債権者に平等に分けなければならないのです。

この場合は、50万円の財産を持っている方と同じように、同時廃止になりません。

⑵ 次に債務が増えてきた経緯に問題があるケースを見てみましょう。

破産法には、免責してはいけない場合として、浪費によって大きく財産が減ったり、多額の借金をした場合、うその収入や借入額を申告して借入をした場合、クレジットカードで買ったものをすぐに売ってお金にかえた場合などをあげています。

このような、不誠実な理由で借金が増えた場合は、債務の支払義務を免れることを認めないとしているのです。

参考リンク:自己破産しても免責を受けられない場合

ですから、パチンコや競馬などのギャンブルが主な原因で多額の借金ができた場合や、FXなどの投資で失敗して多額の借金ができた場合などは、原則として債務の支払義務を免れることができません。

しかし、管財人が就任して、生活状況がどれくらい改善されているかや、破産手続に誠実にのぞんでいるか、借金が増えた原因が他にもないかなどを調査して、裁量で、債務の支払義務を免れることができる場合もあります。

その調査のために、管財人が就任する管財事件になることがあるのです。

4 どうすれば同時廃止になるのか

同時廃止にするためには、先ほどまでの条件を満たさないことを証明すればよいのです。

つまり、財産の関係でいうと、①実際に財産が残っていないこと②借入したお金や財産を処分した際のお金などの使い道を明らかにすること③不適切なお金の使い道がないことを証明すればよいのです。

そして、借金が増えた経緯の関係では、④借金が増えた原因が、生活費や、病気、失業による収入の減少など、比較的やむをえないものであったと認められやすいものであることを証明すればよいのです。

①の実際に財産が残っていないことは、通帳、車検証、保険証券、給料明細等裁判所が要求している資料を提出することで、示せるケースが多いでしょう。

②と③は、たとえば、破産する1年前に500万円の退職金をもらった例でいうと、500万円で、車を買うのに100万円、引越しをするのに30万円、子どもの学費に50万円、無職の期間が半年あってその間の生活費に100万円等を、できるだけ証拠資料をそろえて説明することになります。

この例では、そもそも、使い道の証拠資料が残っているかどうかと、仮に残っていたとしても、この時期に100万円もの車を買う必要があったのかや、引越しをする必要があったのか、無職の期間は失業保険がもらえていて、それで生活できなかったのか等が問題になります。

こういった問題になる点に対して、どれくらい合理的な説明ができるかや、資料が出せるかが、同時廃止になるためのポイントになります。

弁護士等の専門家の役目は、どのような資料や説明がつけば、同時廃止になるかを考えて、必要な資料をお願いしたり、説明の方法を工夫することになります。

④は、借金を増えてきた経緯について、どのような説明や証明ができるかによります。

借入と返済の履歴や買い物の利用明細等から推測されるほか、借入当時の収入、家族構成等から生活費が足りなくなるような状況であったか、本当に必要な支出であったか等が問われます。

弁護士等の専門家の役目は、どういう理由でやむを得ない借入、支出であったのかを示すのに必要な資料をお願いしたり、説明の方法を工夫することになります。

実際は、収入に見合わない生活水準の高さにあるという意味では、無駄づかいがある人は珍しくありません。

どの程度の浪費があれば、同時廃止でなく管財事件になるかは、程度問題ともいえ、説明の方法や資料の示し方によって裁判所の判断が変わりやすいところです。

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